「前略、初恋の彼女が生き返りました。」ネタバレ感想。

年が明けて最初の感想出力記事! 今回はメディアワークス文庫の「前略、初恋の彼女が生き返りました。」(著者:天沢夏月)を読みました。ネタバレ全開の感想です。

どうも、メディアワークス文庫大好きな冥王星です。比較的レーベルカラーが合うのが多いので好き好んで読むのですが、最近は全然終えてなくて積読が増えるばかり。そこでとりあえずジャブとして読もうと思ったのが、信頼のおける天沢夏月先生でした。いや、ジャブじゃなくてストレートを全力で放ってきた作品だったのですけどもね。

天沢夏月先生といえば、デビュー作の「サマー・ランサー」を始め、数々の青春小説を手掛けてきた作者さんで、すごい安定したクオリティで面白い作品を生み出してくれるので毎度安心して手に取ることができる推し作家さんの1人です。

今回読んだ作品の総評としては、特に化けたな!といった感じで、恐ろしい出力と物語の仕掛けを繰り出してきましたね。こういう言い方はアレですけど、並のメディアワークス文庫作品だったら、「情景・心情描写豊かに、でも予定調和で終わるんだろうな……」って思ってたところを、物語自体にどんでん返しの仕掛けを持ってきてくれました! こういうびっくりさせてくれる作品、自分で創作する分にはとても苦手なものなので好き。人間、自分にはないものをもつものには憧憬が混じってしまうんだよね~!

ほんとさー、一人称の文体をうまく利用して、過去回想の一人称と現在の視点で同じように見せて、違うっていう仕掛け作ってくるの凄くない? いや、思いつきはするんだろうけど、それをここで使ってきたっていうのが上手すぎてねー、物語にマッチしすぎている。

はー、とても良かった。病室に面会にやってくるところが本当に最高でボロボロに泣けましたね。今まであらすじとか帯に「泣ける!」みたいな謳い文句がある作品、そんな泣けた思い出がないんですけど、これは普通に涙腺ゆるゆるになりましたね。まーここは単純に私が「友情」をテーマにした感動シーンにめちゃ弱いってのは大きくあると思うんですけど。それにしたって良かった。

あー、少しだけ難点をいうとアレかな。タイトルから期待していた感じの甘い青春模様は確かに過去回想で補充できたんですけど、逆に藤二と奏音の方は思い入れが薄いというか、構造上仕方のないところではあるんだけどちょっと薄味に感じてしまったかなぁ。まぁでもそこはしっかりと丸く収めるのは多分物語として必要で、いわばノルマみたいなものと考えるべきかなぁ。

生き返った奏音の消え方についてはこれはさすがの手腕を感じましたね。なんていうかなぁ、とっても収まりがいいというか、作中のちょっと記憶に残るような言い回し・言葉をうまく使って物語の締めに使ってくるの、やっぱり心地が良いんですよね。その心地よさを味あわせながら、ちょっと寂しさを残しつつもきれいに去っていく。その処理の仕方みたいなのが良かったなぁ。

あとこの作品の良さを引き締めているのがやはりエピローグですよね。エピローグは、未来への展望を感じさせつつ、本当に感動できるシーンを持ってきたな。そんな感じでした。いやさー、男同士だろうが女同士だろうが男女だろうが、友情っていいものなんだよねー。その手のものを扱う作品が大好き。単純に藤二から宏への友情ってだけでなく、奏音からも宏への友情をしっかり抱いていることが感じられるいいシーンで、すごい味わい深かったなぁ。

総括!こんないい作品を、人の感情を動かせる作品を作ってみたいなぁ。そう思わせてくれる良い作品でしたね。友情は良いもの……!

 

 

感想

Posted by 冥王星